寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)

寛骨臼形成不全とは、寛骨臼(かんこつきゅう)が小さくて浅い状態で、大腿骨頭(だいたいこっとう)を十分に受けとめることができないために起こる疾患を言います。(旧名称:臼蓋形成不全)

寛骨臼形成不全

日本人の変形性股関節症の原因で多いのがこの「寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)」です。

これは、2次性の変形性股関節症です。2次性とは、もともと股関節の形に被りが浅いなどの弱点があり、それが大人になって股関節症を発症したものです。他に、先天性股関節脱臼も2次性にあたります。一方、1次性とは、もともと股関節に形体的異常がなかったにもかかわらず大人になってから肥満や生活習慣などで股関節に負担をかけて股関節症を発症したものをいいます。

寛骨臼形成不全の原因

先天性と後天性があります。

先天性によるもの

先天性股関節脱臼や遺伝によるもの、逆子説などが有名です。

逆子説:本来、お腹の赤ちゃんの頭は下を向き足が上になっています。そういう状態であることによって、足をばたばたと伸ばしたら縮めたり自由に動かすことができるようになっています。ですが、逆子の状態であると、足を動かすスペースが制限されてしますので、股関節がずれたり、場合によっては脱臼してしまう。

生後、股関節脱臼が発見され病院で治療を施されて治ったとしても、臼蓋形成不全の状態までは完治されないことが多いのです。

後天性によるもの

環境、生活習慣により起こるものです。

赤ちゃんの時は、三角オムツやおんぶ、抱っこの時の足の位置。股関節は伸ばさずにM字であることが望ましい。また、成長期では、アヒル座りや横ず座り片膝を立てて座るなど股関節に負担のかかる姿勢に注意が必要です。

症状 経過

関節の被りが浅くても、若いころは股関節部の新陳代謝が盛んで、関節に負担がかかっていても、軟骨がすり減ったり、股関節周囲に炎症が波及するまでいたらないので痛みを感じないケースが多いのです。(まれに、股関節がカクンと抜けたような感覚があることはありますが。)

症状の発症は、多くの場合30~40歳頃で、少しずつ違和感や痛みを感じるようになります。

関節に隙間があり軟骨がすり減っていない寛骨臼形成不全症は変形性股関節症の“前期股関節症”に当たります。その頃はまだ痛みなどの症状がほとんどない場合が多いですが、進行すると、軟骨がすり減り始めます。そうなると今度は違和感や痛みを覚えるようになります。関節裂隙(関節の隙間)が狭くなるにつれ、変形性股関節症の初期→進行期→末期へと進んでいきます

保存療法(対応と処置)

まず行われるのが保存療法です。保存療法には、運動療法、薬物療法、安静療法、食事療法、などがあります。手術療法のように体を傷付ける治療法以外のことです。

  • 運動療法 … 関節可動域の改善、筋肉・周辺組織の機能回復、筋力トレーニングやストレッチなど
  • 薬物療法 … 飲み薬や外用薬などによる消炎鎮痛、血行促進
  • 関節内圧の軽減 … 杖を使用すること、長期歩行は避けること、体重を減らすことなど(歩行時には片足に体重の約4倍もの負荷がかかると言われています。体重50kgの人なら歩行で一歩踏み出すたびに約200kgの負荷がかかってしまいます。

状態が進行すると手術療法を迫られるケースも出てきます。(人工股関節による置換手術や寛骨臼回転骨切り術などの自骨手術)

運動療法の注意点

保存療法で一番大切なことは、「関節に負荷をかけない」ことです。寛骨臼形成不全の患者さんの股関節は内圧が高くなっていますので、これを軽減してあげることを考えなくてはなりません。

筋トレは病院での指導やリハビリで良く勧められる方法ですが、寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)の場合、関節窩が浅いので一点加重(関節の一点に体重がかかってしまう)になり安いし、「関節の内圧が上がってしまう」という危険性があるので注意が必要です。

  • 股関節に荷重がかかる運動、筋トレ(スクワット、自重運動 など)
  • 股関節を軸にした運動、筋トレ(足あげ、足の横あげ など)
    (例えば、仰向けに寝て足を持ち上げる筋トレは最も良く行われている運動の一つですが、この運動で股関節にはご自身の体重とほぼ同じだけの圧力が加わってしまいます。体重50kgの人なら約50kgの力になります。)
  • 長時間のウオーキング・エアロバイク
  • 水泳やプール歩行

最終的に手術を勧める医師ほと前段階として、お尻の筋肉(主に中殿筋)を鍛えなさいとかプール、エアロバイクによる筋トレを勧める傾向にあります。なんとか手術しないで頑張ろうとする治療家ほど筋トレは勧めない傾向にあります。

筋肉は、積極的な筋トレにより作るより、痛みが軽減してくることによって自然と増えてくるものです。

効果的な運動療法 ~軟骨再生~

効果的に運動療法を行うためには軟骨に負担をかけないで行うことが大切です

患部に体重をかけないことを『免荷(めんか)』と言いますが、運動療法はこの免荷のもと行うことが大切です。

  • 股関節に圧力を加えないで動かす
  • 筋肉を過度に緊張させないで股関節を動かす
  • 股関節を減圧するように動かす

この条件を満たしているのが「ジグリング(貧乏ゆすり)」です。

整形外科では、一般に一度すり減った軟骨は再生されないとされていますが、昨今、“貧乏ゆすり”をすることにより軟骨が再生するとの報告がされ注目を集めています。(再生される軟骨は元の硝子軟骨ではなく線維軟骨ですが)

貧乏ゆすりの難点としては、一日に3~4時間(連続ではなくトータルの時間)行う必要があることです。専用の健康ゆすり器もありますが、器械なので合わない場合もあります。

この“貧乏ゆすり”と言う表現はテレビや雑誌、マスコミ用の表現です。専門的には“ジグリング”と言います

ジグリング(jiggling)とは、軽く揺する ことです。

実はこのジグリングは、自分で行うよりも他動的に手技で行うことによってその効果をより効率良く発揮することができます。ジグリング法(ゆすり療法)は、テレビなどで話題になるよりずっと前から行われていた手技です。

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